秋に送る手紙などには「秋涼の候~」という言葉が出てきます。これは季節ごとに変化する時候の表現の一つです。
字の感じで何となく秋の言葉というのはわかりますが、どんな使い方をするのでしょう?また、時候には使うのにふさわしい時期も決まっています。
目上の方や少しかしこまった手紙のほかに、ビジネス文書にも使われる言葉なので、教養として覚えておくのもいいですね。
「秋涼の候」の意味や使い方、使用できる時期など例文とともにご紹介します。
「秋涼の候」読み方と意味・由来
秋涼の候は「しゅうりょうのこう」と読みます。あまり聞きなれない言葉ですが、それぞれの漢字を音読みにするだけなのでそんなに難しくありません。
由来ははっきりしませんが、俳句の季語として「秋涼・秋涼し(あきすずし)」というものがあり、松尾芭蕉も「奥の細道」で「秋涼し手毎にむけや瓜茄子」と秋のさわやかな句を読んでいます。
このように古くから日本になじんでいる言葉です。
秋涼とは、秋の涼しい風が感じられる様を表していて、候には「今、まさにその時期です」といった意味が込められています。
合わせて「秋の涼しい風が感じられる時期になりましたね」という意味になります。
なんともさわやかな秋にぴったりの言葉ですね。「秋涼の候」の他に「秋涼の季節に~」「秋涼を感じ~」と少し柔らかくして使う時もあります。
「秋涼の候」適切な使用時期
「秋涼の候」は何日から何日まで使用可能!と決まっているわけではありません。けれども「秋」という大雑把なくくりではなく、もう少し言葉の意味に即した時期での使用が適切といえるでしょう。
秋の風の涼しさの表現ですから、9月の初旬だとまだ残暑がありますから、体感的に涼しくはないですよね。ですからちょっと不適切といえます。
涼しさを感じられる9月下旬から10月いっぱい。遅くとも立冬(11月7日頃)までが適切な使用時期といえます。大まかに10月の時候と覚えておくのも良いでしょう。
それより後は「晩秋の候」「落葉の候」といった、より冬よりの時候へと代わっていきます。
ちなみに「秋涼・秋涼し」を俳句の季語として使うときは、9月限定の季語になります。意味も「暑さがやわらいでさわやかな風が吹くさま」と少し夏よりの印象を持ちます。
「秋涼の候」を使ったビジネス文書&手紙の例文
手紙の書き出しの句として「拝啓」などの頭語に続く形で用いられます。
- 拝啓 秋涼の候、○○様にはますますご健勝のこととお慶び申し上げます
- 謹啓 秋涼の候、貴社益々ご清栄のこととお喜び申し上げます
- 拝呈 秋涼の候、皆様には益々ご清祥のこととお慶び申し上げます等々。
個人にあてた手紙などの場合、少し柔らかい表現での使用もできます。
- 拝啓 暑さも和らぎ秋涼を感じる季節になりました。皆さまにおかれましてはますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
- 謹啓 秋涼の訪れを肌に感じるこの頃ですが、皆さまにはお変わりなくお過ごしのことと存じます。
また、手紙は「拝啓」で始まったら「敬具」、「謹啓」で始まったら「敬白」で終わるのが一般的です。
結びは季節を絡めて相手を気遣う言葉とともに絞めることができます。
- 季節の変わり目は体調も崩しやすくなります。お体にお気をつけてお過ごしください。 敬具
- 秋も深まりゆく季節、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます 敬白
「秋涼の候」は秋の訪れを伝えたい時候の言葉として、とても分かりやすい言葉です。
ですから、夏が終わり、秋の雰囲気を感じ始める頃、自分が「ああ涼しい。秋も本番だな」と感じるときに使うのがもっともしっくりくる言葉といえるでしょう。
文字から意味が伝わりやすく使いやすい時候のことばですのでうまく用いてみてください。