あらたまった手紙を書く時やビジネス文書で冒頭に使われるのが「時候の挨拶」です。
季節を感じさせる言葉を使って相手の健康や近況を気遣います。
そんな時候の挨拶ですが、春先に使われる言葉に「春寒の候」があります。あまり耳慣れない言葉ですがどんな意味なのでしょう?
また、時候の挨拶は使われる時期が限定されます。正しい使用時期を覚えておきたいところですね。
「春寒の候」の意味や使うのに適した時期、使いやすい例文をご紹介します。
「春寒の候」読みや意味は?
「春寒の候」は「しゅんかんのこう」と読みます。
日常生活ではあまり聞かない言葉ですよね。時候の挨拶は漢語調の挨拶なので基本的に音読みになります。単純に春・寒を音読みにしただけなのでそんなに難しくないですね。
余談ですが俳句の世界では音読みで「はるさむ」と読み使われる事もあります。
「春寒」は、春になりちょっと暖かくなったあとにぶり返した寒さのことを言います。
春特有のあの、「日が出てポカポカあったかいなあ~♪と思ってたら、寒気の戻りで翌日は冷え込んで寒い!!やっぱり寒い!!」みたいな感じですね。
「春」とは名ばかりの~、「春」になっても寒さが続く~、といった具合でしょうか。
{~の候}は、「~の季節になりましたが」「~の今日この頃」といった今の季節を表す言葉ですので、合わせて
「春とは名ばかりの寒さがぶり返している季節ですが」「春になっても時折寒い今日この頃」
といった意味になります。
暖かい春が待ち遠しくなりますね!
「春寒の候」使うのに適した時期は?
暦の上で、「春」は「立春(2月4日頃)から始まるとされています。
「春寒の候」は「春になってもぶり返す寒さ」の季節ですから、使い始めるのは立春を過ぎてから。
いつまで使っていいのかというと、目安としては2月いっぱいです。
ただ、日本は北と南で大きく気温が違いますので手紙の相手がどこに住んでいるかを考慮に入れて考えたほうがいいでしょう。
北国では2月なんてまだまだ雪の中ですから、「春寒の候」は3月中旬あたりまで使用できます。
逆に九州南部の方への手紙であれば、3月はそれなりにあたたかいですから、やはり2月いっぱいにしておくのが妥当といえます。
同じ季節に使える時候の言葉には「余寒の候」「立春の候」「残雪の候」などがあります。
「春寒の候」を使った例文
「春寒の候」はビジネスやお世話になった方への手紙に使うことができます。
きちんとした手紙の構成は簡単に言うと
- 頭語(拝啓・謹啓など)
- 時候の挨拶(春寒の候など)
- 相手の安否を尋ねる言葉
- 本文
- 結びの言葉
- 結語(敬具・謹白など)
の順番となります。
「春寒の候」をこの流れに沿った例文でご紹介します。
ビジネス文章での例文
例その1
拝啓 春寒の候 貴社益々ご発展のこととお慶び申し上げます。
~本文~
余寒なお過ぎ去りがたき折、ご自愛専一にてお過ごしください。
敬具
例その2
謹啓 春寒の候 皆様におかれましてはますますご活躍のこととお慶び申し上げます。
~本文~
三寒四温の時節柄、お健やかにお過ごしになられますようお祈り申し上げます。
謹白
*「拝啓」で始まった場合は「敬具」もしくは「敬白」で終わり、「謹啓」なら「謹白」もしくは「謹言」で終わります。拝啓より謹白のほうがより丁寧な言葉になります。
*寒さで体調を崩しやすい季節ですから、結びには季節に合った相手の体を気遣う言葉を盛り込むといいでしょう。
親しい方への手紙の例文
例1
拝啓 春寒の候 皆様いかがお過ごしでしょうか。
~本文~
春とはいえ寒さがぶり返してきています。お体にお気をつけてお過ごしください
敬具
「春寒の候」ではなく「春寒の折」、結語に「かしこ」を使った例2
拝啓 春寒の折 皆様、お変わりなくお過ごしのことと存じます。
~本文~
梅の薫る季節です。寒さに負けずお元気でお過ごしくださいますよう。
かしこ
「春寒の候」ではな「春寒のみぎり」を使った例3
拝啓 春寒のみぎり ○○様にはますますお元気でお過ごしのことと思います。
~本文~
まもなく本格的な春がやってきます。風邪などひかぬようご自愛ください。
敬具
*より親しい相手への手紙で、「~の候」が少し硬く感じられるときは「~の折」「~のみぎり」と言い換えることもできます。また、「敬具」も「かしこ」と言い換えることができます。
いかがでしたか。
最近はメールやLINEなどでの連絡を済ませる機会が増えたため、手紙を出す機会も減りましたが、たまには手紙もいいものです。
春の兆しが訪れる頃に「春寒の候」を使ってご無沙汰している方に温かい手紙を書いてみてください♪